ジュエリーに使われる金は、金自体に価値がある「実物資産」です。
株や債券、通貨などの金融資産は、その発行体が価値を与えています。
そのため、最悪の場合、紙くずになる可能性もあるのです。
しかし、金はいつの時代も、どこの国でも価値を持つので、景気変動や国家の破断などの地政学的リスクへの耐性が強いといえます。
金の価格
金は、株と同じように市場で取引されており、価格が変動しています。
金の価格(田中貴金属工業)
https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/d-gold.php
世界の市場はいくつかあります。
- ロンドン市場
- ニューヨーク市場
- 香港市場
- シンガポール市場
です。
代表的なのは、ロンドン市場で現物価格です。
貴金属メーカーや資源会社が買い付けをする際の約定価格に使われています。
ニューヨーク市場は、先物取引が主になります。
市場参加者は、金融関係者です。
金価格の歴史
円建て金価格が2020年1月時点で、1g=6,000円を突破しました。
これは、1980年1月以来、40年ぶりの高値水準にあります。
これまでの円建て金価格の推移をみると、1980年以降は長らく低迷していましたが、2006年以降はじりじりを値を上げてきました。
ドル建てでも上昇しています。
ニューヨーク金先物価格は、2020年3月に1トロイオンス=1,700ドルを突破しました。
これまでのドル建て金価格の推移をみると、1980年1月の1トロイオンス=870ドル、2011年9月の1トロイオンス=1,900ドルを突破した2回のピークがあります。
金価格のメカニズム
金価格がピークを付けた時に共通するのが、「実質金利がマイナス」にあったということです。
実質金利とは、名目金利からインフレ率を引いたものです。
実質金利がマイナスというのは、貨幣の価値が減ることを意味し、インフレが期待されているということになります。
金がインフレに強いといわれている理由です。
1980年は、長期金利は10%超ありましたが、第2次オイルショックで物価が高騰し、実質金利はマイナスになりました。
2011年は、原油価格が高騰し、インフレ率が名目金利を上回りました。
2020年現在、インフレ率は2%前後ですが、コロナによって世界的な金融緩和によって名目金利が歴史的な低水準となっているため、実質金利がマイナスになっています。
金の需要と供給
2018年の金の需要と供給は、
- 総供給:4502トン
- 総需要:4018トン
でした。
金の供給
主に、
- 鉱山
- スクラップ
です。
鉱山が供給の約75%を占めます。
2018年の生産量の順位は、
- 中国(401トン)
- 豪州(315トン)
- ロシア(311トン)
- アメリカ(226トン)
- カナダ(183トン)
となります。
スクラップは、市場の買い取り業者に持ち込まれる金貨や地金で、約25%を占めます。
金価格が1トロイオンス=1,500ドル以上になると増える傾向にあります。
金の需要
需要の内訳は、
- 宝飾品
- 小口投資(地金、コイン)
- 中央銀行の外貨準備
- 工業用(歯科、エレクトロニクスなど)
です。
中国やインドなどの文化的に金を好む新興国が50%以上買い占めます。
インドでは、光り輝く金は、魔除けの効果があるとされ、持てば持つほど富が集まると考えられています。
インドの輸入品目の1位は原油で2位は金でした。
政府は経常赤字を解消するために、輸入規制の乗り出し、段階的に輸入関税を引き上げています。
中国は、
- 2000年個人の金保有の自由化
- 2002年上海に金の取引所が開設
- 2005年金地金の投資分野が解禁
- 2008年9月リーマンショック
- 2009年9月銀行の窓口で販売を開始
2013年に金の需要でインドを抜きました。
近年は、ロシアや中国の中央銀行が、米国債の保有を減らす一方で、金の保有を増やし続けています。