真珠は、貝から採れる有機物の宝石です。
月の雫、人魚の涙と呼ばれるほど美しい光沢を持つため、古くから世界各地で愛されてきました。
真珠の基礎知識
天然真珠
貝の生体内で生成されたものです。
天然、ナチュラル、オリエントなどで呼ばれます。
現在、天然で採れることは非常に稀です。
養殖真珠
現在、市場に流通している真珠のほとんどが養殖真珠です。
真珠を生産する母貝に貝殻でできた核と外套膜切片のピースを挿入して養殖されたのが有核養殖真珠です。
母貝に外套膜切片のみを挿入して養殖されたのが無核養殖真珠です。
真珠の品質基準
真珠の品質基準は、
- 形
- キズ
- テリ
- 巻き
- 色
です。
キズ
海産物であるため、キズはつきものですが、キズが少ないほうが当然価値は高いです。
デザインによっては、真珠の個性として取り扱われる場合もあります。
テリ
反射、屈折、干渉などの作用による真珠独特の光です。
表面が乱反射のなく円滑で、真珠層がきれいに均一で厚く積み重なっていると、光透過性などが加わりテリの良さを感じます。
巻き
真珠層の厚さのことです。
巻きの厚い珠ほど、テリの特徴が強く出ます。
養殖期間、成長度合い、母貝の種類によって巻きの厚みは変わります。
真珠の形
真円・ラウンド
外形の周囲が全て真珠層に包まれて形成されている球形真珠。
セミラウンド
真円真珠でやや変形した真珠。
バロック
変形度合いの強い真珠。
オーバル
長径、短径の差が小さい楕円、卵型の真珠。
ツイン
有核真珠が養殖中につながり、瓢箪状になった真珠。
アコヤ養殖真珠に多く、双子珠とも呼ばれます。
ボタン
円形で扁平な形の真珠。
シロチョウガイ、クロチョウガイ養殖真珠に多い。
ドロップ
水滴形状の真珠。
左右対称の形のきれいなものは、ティアドロップと呼ばれます。
半形・ハーフ
半形状の核を入れて真珠層を形成させた真珠。
核は、半形状のほか、ハートや十字があります。
ケシ
海水産無核真珠のうち、珠径が約2ミリ以上のもの。
シード
海水産無核真珠のうち、珠径が約2ミリ以下のもの。
真珠の単位
パールグレーン
真珠の取引で用いられる重さの単位
1パールグレーン=50mg
4パールグレーン=1ct
匁
養殖真珠の取引で用いられる重さの単位
1匁=3.75g
1匁=75パールグレーン
貫
養殖真珠の取引で用いられる重さの単位
1貫=1,000匁
真珠の種類
アコヤ真珠
日本国産の真珠の母貝であるアコヤ貝から採れる真珠。
貝の特性上、他の真珠に比べて丸くなる確率が高いとされています。
昭和26年に御木本幸吉がアコヤ真珠の養殖に成功しました。
真珠の中でも最も透明感があり、キメが美しいと言われています。
アコヤ真珠のほとんどが日本で養殖されています。
主に、三重県、愛媛県、長崎県、熊本県の海で行われています。
海外では、中国、ベトナム、韓国でも少量生産されています。
養殖期間は、ほとんどが一年以内(10カ月程度)で、1年未満のうちに浜揚げされた真珠を「当年物」と呼びます。
それに対し、1年以上養殖された真珠を「越物」と呼びます。
色は、
- ホワイト系
- ホワイトピンク系
- ホワイトグリーン系
- クリーム系
- ゴールド系
が中心です。
白蝶真珠
白蝶真珠は、南洋真珠最大の真珠貝である白蝶貝(シロチョウガイ)から採れる真珠です。
貝殻を左右に開くと、蝶が大きく羽を広げた形になることが名前の由来です。
主にオーストラリア、インドネシア、フィリピン、ミャンマーなどの南洋で養殖されています。
母貝には、貝殻内面の周辺部が銀白色のシルバーリップと黄色のゴールドリップの2種類あります。
オーストラリアではシルバーリップが多く、大粒でホワイト系の真珠ができやすい。
インドネシア、フィリピン、ミャンマーではゴールドリップが多く、ゴールドやイエロー系の真珠ができやすい傾向にあります。
白蝶真珠の最大の魅力は、華やかなゴールドと気品あふれるホワイトといった色合い。
黒蝶真珠
黒蝶真珠は、アコヤ貝と同じウグイスガイ科の真珠貝である黒蝶貝(クロチョウガイ)から採れる真珠です。
貝殻を左右に開くと、蝶が大きく羽を広げた形になることが名前の由来です。
主にポリネシア(タヒチ)海域で養殖されるため、タヒチ真珠とも呼ばれています。
他には、フィジー島、ニューカレドニア島、ニュージーランドなどの南太平洋海域です。
黒蝶真珠には、黒の色素はありません。
赤、青、黄系の色素が混ざり合い、黒系、緑系、グレー系、赤系など、神秘的な輝きを醸し出しています。
深い緑に赤みがかかった「ピーコックグリーン」と呼ばれる色目に人気があります。
淡水真珠
イケチョウガイやカラスガイといった淡水生の貝によって産み出される真珠が淡水真珠です。
アコヤ真珠と異なり、母貝に核を挿入しないことから、真円ではなくライス型やドロップ型といった変形の真珠が産み出されます。
近年では、アコヤ貝や南洋真珠と同じ核を使うようになっています。
日本では、琵琶湖や霞ケ浦などで養殖されています。
ほとんどは、中国から輸入されています。
ホワイト系、オレンジ系、ピンク系、パープル系と色は豊富です。
ひと昔前までは、淡水真珠は小粒で変形したものが多く、安かろう悪かろうのイメージでした。
しかし、ヒレイケチョウガイという淡水貝からの養殖に成功すると、良質なものが出回るようになりました。
真珠の生産量
2017年の日本の真珠生産量は20.124t、産出額は153億66百万円です。
生産量の推移は、
- 2007年 179億円
- 2008年 132億円
- 2009年 84億円
- 2010年 97億円
- 2011年 94億円
- 2012年 99億円
- 2013年 112億円
- 2014年 135億円
- 2015年 156億円
- 2016年 165億円
- 2017年 153億円
真珠生産は、バブル期は生産額が高水準で推移していました。
1996年に真珠貝の感染症である赤変病が発生しアコヤ貝が大量死する現象が始まりました。
養殖業者の撤退が続き、2000年以降の生産量は抑制されると同時に、海外市場では南洋真珠や淡水真珠が競合になり、低水準で推移しています。
2011年の東日本大震災の影響で、三重県の養殖場が損害を受けて生産量が落ち込んでいます。
日本の産地は、全国10県で行われています。
愛媛、長崎、三重の3県で9割以上占めています。
特徴は、愛媛は大玉、長崎は中玉、三重は小玉や厘玉が多いです。