宝石は、その持っている美しさを発揮させるために、石の特質に応じていろいろな形にカットされ、きれいに研磨されます。
カットは大きく2つに大別されます。
- たくさんの面に磨かれ、キラキラと輝くカットのファセットカット
- ドームの形に磨かれたカットのカボションカット
ファセットカット
ファセットカットは、いくつもの小さな平らな面(ファセット)が連なったカットで、主に透明な石に用いられます。
表面の光沢と輝きを強調するのに適したカットです。
ファセットカットには、いろいろな種類があります。
- ブリリアントカット
- ステップカット
- その他
があります。
ブリリアントカット
ブリリアントカットは、内側から輝きを放つためのカットです。
代表的なものとしては、
- ラウンドブリリアントカット
- オーバルカット
- ペアシェイプカット
- マーキスカット
- ハートシェイプ
- プリンセスカット
ラウンドブリリアントカット
18世紀に初頭に考案されたダイヤモンドの美しさを最大限に引き出すことのできるカットです。
クラウン32面、パビリオン24面、テーブル、キュレットと計58面のファセットに研磨します。
理想的なブリリアントカットのプロポーションは、ガードルの直径を100とすると、テーブルの直径が55、クラウンの高さが16、パビリオンの高さが44の比率となります。
オーバルカット
楕円形の形をしたカットです。
現代のオーバルカットは、ブリリアントカットの一種で、1957年にラザール・キャプランによって開発されたものです。
オーバルカットは通常、ラウンド・ブリリアントカットと同様57のファセットからなります。
同じカラット数の宝石と比べると、オーバルカットはラウンドカットよりも大きく見えます。
オーバルカットの最良のプロポーションは、縦横比1.33~1.66:1とされていますが、好みによりある程度の幅が許容されています。
オーバルカットの宝石は、リングにセットするのに適しており、中央のストーンとしても、メインの周辺にあしらうのにも使えます。
ペアシェイプカット
洋ナシ型のカットです。
ドロップカットとも呼ばれています。
71のファセットからなり、丸みを帯びた先端が最も明るく輝きます。
長さと幅の割合は、ある程度好みによって決まります。
マーキスカット
ナヴェットカット、マルキーズカットとも呼ばれます。
ナヴェットはフランス語で小舟を意味します。
マルキーズ(侯爵夫人)カットと呼ばれるのは、フランスのルイ15世がお抱え宝石職人に委託し、最愛の妾である美しい女性ポンパドゥール夫人の微笑する口元に似せるために生まれたカットだという伝説に由来します。
細長い楕円形状で、2本の曲線の両端が尖った形となっています。
中央はボリュームがあり非常に明るく輝きますが、ある程度の奥行きが必要です。
奥行きがないと光が通り過ぎてしまい、ブリリアンスが生まれません。
マーキスカットの縦横比は、通常2:1です。
標準的なファセットの数は57で、ブリリアントカットと同じです。
マーキスカットは、技術的に非常に難しく、特に先端が欠けやすいので豊富な経験が求められます。
ハートシェイプ
ハート形のカットです。
ブリリアントカットの一種で、59のファセットからなります。
ハートシェイプは、形がユニークで優れた職人技を必要とします。
起源は不詳ですが、インドで開発されたと考えられています。
映画「タイタニック」のおかげで人気が絶頂になりました。
ダイヤモンドに囲まれたハートシェイプのサファイアのペンダントが登場しました。
プリンセスカット
四角形のブリリアントカットです。
ラウンド・ブリリアントカットとステップカットを組み合わせたものです。
上部は先端をカットしたようなピラミッドのような形で、下部は正方形または長方形です。
1960年代にハンガリーの宝石職人アプラッド・ナジが「プロフィールカット」を作ったことから生まれました。
ファセット数が非常に多いため、透明な淡い色のストーンに適しています。
ブリリアントカットの原型と言われているのが、
- クッションカット
- オールドマインカット
- オールドヨーロピアンカット
クッションカット
丸みを帯びた四角形のカットです。
クッションのような形をしています。
オールドマインカットが進化したのがクッションカットです。
オールドマインカット
19世紀末から20世紀初めにかけて流行しました。
オールドヨーロピアンカット
ステップカット
ステップカットは、ファセット面が長方形で、外周と平行に階段のように並んだカットです。
代表的なものとしては、
- エメラルドカット
- バゲットカット
- スクエアカット
エメラルドカット
ステップカットの代表です。
エメラルドが放つ美しいグリーンのカラーやブリリアンスを最高に引き出すカットであることから名づけられました。
長方形や正方形に近い印象ですが、角が落とされているので、正確には八角形です。
アールデコの時代に大流行しました。
最も有名なエメラルドカットの宝石は、ベネズエラの原石からカットされた4つのダイヤモンドのうち最大のものである「リベレーターⅠ」です。
リベレーターという名は、ベネズエラ独立運動の英雄で、ラテンアメリカの解放に尽力したことから解放者と呼ばれたシモン・ボリバルから由来しています。
バゲットカット
長方形のステップカットです。
フランスのパン、バケットの形に似ていることから名づけられました。
ファセットが階段のように外周に平行なステップカットの一種です。
シンプルな道具と技術で作れること、ブリリアントカットなどと比べて、重量のロスが少ないことが利点です。
バケットカットは通常、小さなサイズの宝石に施され、違うカットの中央のストーンを囲むようにして用いられます。
メインのストーンに用いられることはほとんどありません。
スクエアカット
正方形のカットです。
その他のカット
その他は、パビリオンとクラウンを持たないカットです。
代表的なものとしては、
- ブリオレットカット
- ローズカット
などがあります。
ローズカット
ローズカットは、カボションに似ていますが、上部に24個の三角形のファセットがあります。
裏面のパビリオンがなく、表面がほのかにふくらんでいます。
表面を三角の面ですべて覆う形がバラのつぼみを連想させることから命名されました。
ローズカットは、重量のロスが大幅に抑えられるため、厚みのない原石には特に適しています。
ローズカットは、17世紀にオランダで発展しましたが、18世紀には他のカットに押されて人気が下降します。
しかし、20世紀初めにダイヤモンドのローズカットが見直され、再び用いられるようになりました。
これらに該当しないものは、ファンシーカットとして呼んでいます。
トリリオンカット
50のファセットがある三角形のカットです。
アッシャー社により開発され、1960年ニューヨークで発表されました。
基本的に三角形ですが、輪郭は直線だけではなく曲線のこともあり、角がシャープなものと丸いものがあります。
カボションカット
カボションカットは、ドーム状にカーブしたカットで、主に半透明、不透明の石に用いられます。
カボションカットは、宝石表面のツヤや表面に現れる模様や質感を強調するのに向いたカットです。
また、スターやキャッツアイなど光彩効果を出すためにカボションカットにすることもあります。
カボションカットには、ドームを高くしたハイカボション、低くしたローカボション、と高さによる呼び名があります。
また、石の底が平らなものをシングルカボション、石の底が膨らんだものをダブルカボションと呼びます。
その他、石の底を内側にくぼませて、光線の通過を良くするホローカボションというカットもあります。
カボションカットの外形は、円や楕円が主ですが、四角、長角、マーキースなどいろいろ種類があります。