ジュエリーデザイナーが、ジュエリーのリフォームを依頼されることは少なくありません。
ジュエリーリフォームを専門にするクリエイターも多いです。
ジュエリーリフォームを受けるにあたって必要な知識やスムーズに進める方法、トラブルの対処法などを解説していきます。
近年、ジュエリーのリフォームの需要が高まっています。
デザインが古くなったために身に付けなくなったジュエリーを作り変えたり、思い出のジュエリーを好きなデザインにリフォームしたりする方が増えています。
ジュエリーの素材は、洋服などと違い、貴金属や宝石の劣化が少なく、貴金属は溶解して、他のデザインに作り変えることができます。
ジュエリーリフォームに必要な知識
ジュエリーリフォームは、お客様によって様々なニーズがあるので、幅広い知識や経験が求められます。
デザイン力や制作技術力に加えて、素材の知識や見積もりの知識など多岐に渡ります。
- 素材の知識
- デザインの知識
- 加工の知識
- コストの知識
ジュエリーリフォームのパターン
ジュエリーリフォームには、さまざまなパターンがあります。
イヤリングをペンダントにするなどアイテムを変えるパターンや、石を加えたり外したりするパターンなどがあります。
いろんなパターンを知識として持っておくことで、お客様への提案力もあがります。
- イヤリングをペンダントやリングに
- 切れたネックレスをブレスレットに
- 立爪リングをペンダントに
- 宝石リングにメレダイヤを加えてグレードアップ
- 一文字リングにカラフルな色石に変える
など
イヤリングをピアスに加工
オパールリングの枠を留め直す方法
ジュエリーリフォームのプロセス
ジュエリーリフォームは、次のようなプロセスで進みます。
- 好みや予算を聞く
- デザイン画を描く
- デザインを決める
- 見積もりと納期を提示する
- 元枠から宝石をはずす
- 下地金の重量を計る
- ジュエリーを制作する
- チェックする
好みや予算を聞く
ジュエリーリフォームは、お客様からどのようなデザインのジュエリーが欲しいのがヒアリングすることから始まります。
ヒアリングする項目は、
- 好みのデザインイメージ
- 地金
- 仕上げ
- 石留め
- 予算
- 納期
デザインイメージは、言葉だけで説明するのが難しいので、過去の作品やカタログを用意しておきます。
それらを見ながら話を進めるとスムーズに決まります。
お客様の服装や容姿、肌の色などを観察し、その人に似合いそうなデザインを提案することは重要です。
デザイン画を描く
ヒアリングした内容を元に、注文のデザインや予算を考慮して、デザイン画を描きます。
要望内容だけではなく、提案やアレンジした内容など複数パターン用意しておくことが一般的です。
デザイン画は、リングの場合は上面図と正面図があれば制作はできますが、立体図を用意しておくと全体のイメージを把握してもらいやすくなるでしょう。
ペンダントは、上面図と側面図があれば十分です。
図面には、デザインのポイントや制作上の注意書きや補足を添えると、お客様の理解も深まります。
色鉛筆やマーカーなどで簡単に着彩したり、水彩絵の具でしっかり着彩することもあります。
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デザインを決める
デザイン画を何枚か提示し、1点を決めます。
お客様が迷うときも多々ありますので、
- デザインのポイントを説明
- コーディネートのアドバイス
を的確にできるように心がけます。
見積もりと納期を提示
デザインが決まれば、見積もりと納期を提示します。
リフォームで掛かる必要は、
- 地金代
- 追加する宝石代
- デザイン料
- 制作料
などです。
地金代は、デザイン画から必要な地金の重量を推定して計算します。
加工途中で減る地金分も10~15%足して計算します。
デザイン料や制作料はかかる時間と難易度から算出します。
その他、彫り留め代やメッキ代、場合によっては宝石研磨代など、必要に応じて掛かります。
納期は、お客様の予定も聞きながら、多少余裕をもって提示します。
なにかトラブルが起こって、作業が遅れるリスクを考慮しておきます。
元枠から宝石をはずす
リフォームする枠から宝石をはずします。
中石の場合は、爪を糸のこで切ったり、爪起こしで爪を起こして枠から外します。
外した石は、ルーペでキズの有無を確認し、重さを計ります。
メレダイヤモンドは、中石と同様に外し、彫り留めの場合は枠を切ってはずします。
下地金の重量を計る
元枠の地金を下地金といいます。
下地金は比重計で重量を計り、金性を確認し、重量を計ります。
金性が悪い地金の時やろうの多いチェーンの場合、精錬に出してから使います。
ジュエリーを制作する
リフォームするデザインで、足りない地金やメレダイヤモンドがある場合は、それらを用意します。
まず、ワックスで制作するか、地金で制作するか、どちらが早く、きれいに仕上がるのか検討します。
制作を外注する場合は、デザイン画どおりに作れる技術力をもった職人かどうかを判断して仕事を依頼します。
出来上がりをチェック
お客様に納品する前に、汚れは残っていないか、地金に小傷はないか、デザイン通りの仕上がりになっているかなどをチェックします。
宝石が入っている場合は、石が欠けていないか、爪が浮いていないか、石が動かないか、などもチェックします。
その他、リングの場合は、サイズを確認し、アームが円になっているかも確認します。
リフォームでのトラブル
お客様と直接コミュニケーションを取りながら、リフォームすることは、常にトラブルの可能性もあります。
トラブルで多いのが、
- デザインに関するトラブル
- 宝石に関するトラブル
です。
イメージ違いによるトラブル
出来上がった作品がデザインのイメージと異なるというクレームのために作り直すということもあります。
イメージの違いを防ぐために、ワックスで制作する場合は、ワックスの原型を一度見せて、ボリューム感などデザイン画では分かりにくいポイントを確認する方法もあります。
宝石についてのトラブル
宝石のトラブルで多いのが、宝石をはずした時とジュエリーを加工したときに起こります。
預かったジュエリーの宝石を枠から外した時に、爪やふくりん留めの地金の下に傷を発見することはよくあります。
そういった場合に対処としては、お客様の前で宝石をはずすこともあります。
ジュエリー制作中に、宝石が変色したり、キズついたりする場合があります。
宝石の性質と加工するときの注意点を良く理解し、お客様に説明しておく必要があります。
宝石の色の見え方は、石の留め方や地金の色によって変わります。
このような注意点は、事前にお客様に説明しておく必要があります。
また、お客様が信じていた宝石が、実は違った石だったということもあり得ます。
お預かりしたときに、石の特徴やキズの有無、サイズを記録するとともに、写真を撮っておきましょう。