シルバーやゴールド、プラチナなどの貴金属を糸のこで切り、ヤスリで削ってパーツを作り、ろう付けして組み立てて、ジュエリーを作る方法です。
この技術は古くからある技術で、江戸時代にさかのぼります。
当時、錺職とか錺屋と呼ばれた金属加工技術者たちは、糸のこやヤスリなどを使い、飾り金具やかんざしをはじめとする女性用の装身具を作っていました。
その職人たちが、明治に入ると技術を応用して、指輪や帯留めなどを作る仕事に従事し、ジュエリー制作の技術が受け継がれています。
地金をなまし、さまざまな工程を経て、石を留めて宝石ジュエリーを作る場合には、素材の性質を理解して、素材に合った技術を使う必要があります。
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ジュエリー制作に必要な貴金属(シルバー、ゴールド、プラチナ)の基礎知識
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使用する工具は、ローラーやバーナー、糸のこやヤスリ、ヤットコなどがあります。
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ジュエリー工具の使い方と作業ポイント
地金取り 地金の固まりを、たたき、伸ばし、測定工具を使って、長さ、幅、厚みを測りながら、加工に必要な地金を作ることを地金取りといいます。 うまく地金取りができればヤスリがけをする時間は短縮でき、地金の ...
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今回は、本格的にリング制作に取り組むときの作業工程を一つひとつ解説していきます。
地金によるリング制作の順序
リング各部の名称
- 石をのせる「石座」
- 石を固定する何本かの「爪」
- リング部分の「腕」
- 腕と石座をつなぐ「肩」
- 装飾と補強をかねた「腰」
から構成されています。
制作の順序は石座からです。
通常、腕、メレ座、肩、メインストーン座、爪、腰の順番で進めます。
地金どり
最初に行うのが、地金どりです。
地金どりは、ジュエリーパーツの材料を作ることです。
ジュエリーデザインに応じて、板状やパイプ状などいろいろな形状の地金どりをします。
石座は、ローラーを使って、地金を平らにつぶします。
爪など細い角棒は、角溝ローラー部分で、地金を細くします。
石座
石座はジュエリーの主要パーツです。
石座は石の形に合わせて作りますが、ポイントは、
- 石の美しさを引き立たせる
- 石を大きく見せる
- 石座にしっかり落ち着かせる
ことです。
カボションの石座の場合、石の外周と石座の外側とがぴったりと一致するように作ります。
ファセットカットの石座の場合、石の外周より少し小さめの石座を作ります。
ファセットカットは、少し石座を小さくした方が側面から光が入り、輝きが一層増します。
カボションの石座を作る
- 石座用の地金を用意する
- バーナーで地金をよく熱してなます。酸素バーナーを使用。
- 巻きはじめの切り口面をヤスリがけする
- 巻きはじめが爪の位置にくるようにして石の外周に添って巻いていく
- 口細ヤットコを使い、石の形に合うよう正確に巻く
- 石のカーブに合っているか時々確認する
- 始めの部分と重なるまで巻く
- 重なった部分を糸のこで切る
- ヤットコで切り口を合わせる
- 石を石座にのせる
- ロウ付けする
- 石座の外側、内側のキズやロウをヤスリで取り去る
- 石をのせてよく確かめる。石から出ている分の地金を中目ヤスリなどで削り落とす
- ヤスリ、キサゲ、ペーパーヤスリで外側、内側、側面を仕上げる
- 全体を仕上げる
多少のゆがみやねじれは、各種のヤットコで直します。
石座が大きい時はノコ刃を合わせ目に入れてちぢめ、石座が小さい時は石座用芯金を使って伸ばします。
腕
腕は土台なので、重要な部分です。
石座が正確にできたとしても、腕に曲がりや狂いがあると、石座と腕のロウ付けがうまくいきません。
腕には、割り腕、たたき腕、ひねり腕などがあります。
メレ座
メレ座の制作は非常に細かい作業です。
肩
石座と腕をつないで補強する役目をする肩は、同時に装飾を兼ねることがあります。
肩には三角状、木の葉状などの装飾的な肩と、腕と一体化した切り込み式の肩があります。
肩が大きすぎると指にはめた時邪魔になります。
腕と一体化した肩を作るときは糸のことヤスリを使って腕に切り込みを入れ、そこに肩をロウ付けします。
爪、ふくりん
爪は石を押さえて留める役割があります。
ポイントは、
- 宝石の美しさや大きさを損なわない
- 石の形やカットをマッチ
- ジュエリーデザインと融合
することです。
爪には、
- 何本かの細い棒状の地金で作る爪
- 石の縁をフレーム状に囲む覆輪(ふくりん)
などがあります。
棒状の地金で作る爪の場合、4本の地金を四隅に付けるのが基本ですが、石の形に合わせて、3本や6本の爪で留めることもあります。
爪の形は、オーソドックスな並み爪や包みこむように石を固定するフクロ爪があります。
ふくりんは、爪に比べてシンプルでスッキリしたラインが出るので、カジュアルなデザインのジュエリーに用いられます。
ふくりんは、外側の座と石を乗せる内側の座の組み合わせによってできています。
外側の座は、石がぴったり入る大きさに作ります。
腰
石座と腕の間をつなぎ、補強と装飾の役目をしているのが腰です。
腰のスタイルは、唐草状の曲線を組み合わせた腰や曲線を縦に何本か並べた腰、窓状に空間のとってある腰といろいろあります。