今後の日本の景気
ジュエリーは、必需品ではないため景気の影響を受けやすい業界です。
日本市場においては、
- 人口減少により消費者の絶対数が減る
- 消費増税により景気悪化は確実
なので、市場規模はゆるやかに縮んでいくことは確実です。
期待できる分野
ジュエリー市場の中で唯一期待できる分野がインバウンド需要でした。
しかし、コロナの影響でインバウンド市場は消滅しました。
ジュエリー企業がアフターコロナに向けてやるべきこと
国内のジュエリー業界の見通しは非常に厳しいことが予想されます。
今後予想されることは、廃業やM&Aによる事業淘汰が起こります。
つまり、生き残りをかけた戦いが始まります。
ジュエリー業界は、
- 多品種少量生産
- 消費者からすると不透明
- 無駄な商習慣や業務プロセスが多い
- IT化が進んでいない
- 経営層の高齢化
- 経営、マーケティング、ITの人材不足
という特徴と問題を抱えています。
しかし、逆に考えると、企業レベルでは戦い方によってまだまだ成長できる余地が大きいといえます。
課題を敏感にキャッチし改善できる企業は伸び、改善できない企業は淘汰されることになります。
成長する為に必要なのがデジタルトランスフォーメーションです。
デジタルトランスフォーメーションは、いろいろな要素がありますが、大きく
- マーケティング
- テクノロジー
- ビジネスモデル
がポイントです。
ジュエリー業界は、デジタル化によって大きく変革できる可能性のある業界ですが、現在もっともデジタル化に遠い業界でもあります。
残念ながら、衰退することが確実なジュエリー業界に優秀な経営、マーケティング、ITの人材が入ってくることはないでしょう。
デジタルトランスフォーメーションは、現在の企業が持っているリソースで取り組むしかありません。
ジュエラーズギルドは、テクノロジーの活用やビジネスモデルの構築をサポートすることによって、制作と販売の生産性を上げることを目指します。
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ジュエリー業界のテクノロジーの活用
ジュエリー業界は、テクノロジーを活用し、生産性を上げる余地がいくらでもある業界とも言えます。
制作面、販売面、それぞれで活用方法を整理していきます。
制作面でのテクノロジー活用
制作面のポイントは、
- 制作工程の見える化
- 生産性の向上
です。
制作工程の見える化
次に、制作工程の見える化です。
ジュエリー制作において、デザイナーとCADオペレーター、3Dプリンタ、キャスト、ジュエリー職人の仕事が分業化されています。
ジュエリー制作のすべての工程を理解し、コーディネートし、制作プロセスを最適化する人材が不足しています。
前後工程の知識不足により、不良発生や顧客が望む品質ができなかったり、工程を横断した品質向上の取り組みができないなど、生産性向上を阻害する要因になっています。
制作工程を見える化し、改善することで生産性を向上することが可能です。
ものづくりにおいては、QCDを向上することが大切です。
- Q 品質
- C コスト
- D 納期
制作工程横断で、見える化することがQCD向上につながります。
QCD向上は、顧客の商品満足につながりますし、制作工程をオープンにすることで安心、信頼感を与えることもできます。
具体的には、
- 内部的には、制作管理ツールの導入
- 外部的には、制作工程の情報発信、YouTubeなどでの動画配信
が最低限必要なことです。
生産性向上
生産性向上のカギは、最新のツールを活用することです。
既にCADと3Dプリンタを活用し、制作プロセスの生産性を高める取り組みがされていますが、まだまだ十分とは言えません。
ジュエリーCADは、教育コストの高さ、他の業界に比べて給料水準の低さなど、人材不足が続いています。
しかし、CADソフトの進化やノウハウの蓄積で、CADデザインの生産性を向上させることは可能です。
販売面でのテクノロジー活用
ジュエリー業界は、展示会や店頭で現物を見て、購入することが大半でした。
なので、接客が命という考え方の宝飾店が多いのが現状です。
Webマーケティングもやってはいますが、まだまだ専門家が参入している状況とは言えません。
同じファッション業界でもアパレルは最先端をいっているので、参考にするとよいでしょう。
販売面では、
- 認知
- 比較検討
- 購入
- リピート
という、お客様の購入プロセスに応じた施策を打つことが大切です。
認知
認知段階においては、
- サイト、SEO
- SNS(インスタ、ツイッター)
- 動画(YouTube、TikTok)
- MEO
- ネット広告
を活用して知ってもらうことが大切です。
品質の高いジュエリーを作っていても、知られなければないのと同じです。
比較検討
比較検討段階においては、
あらゆる媒体で、ストーリーを発信することが大切です。
単に商品情報を発信するだけでなく、創業者のストーリーやデザイナーの想い、職人の制作風景など、ジュエリー制作におけるストーリーが必要です。
日本のジュエラーがよくやることですが「品質が良い」ことを押しすぎるところがあります。
たしかに品質は良いことはアピールポイントの一つですが、顧客からしたら品質が良いのは当たり前なので、当たり前のことしか言っていないのは、アピールしていることにはなりません。
インポートハイジュエラーがなぜブランド力があるのかを分析してみるものよいでしょう。
制作工程の見える化ができているなら、デザインや制作工程を動画で発信することも信頼性向上につながります。
購入
購入段階においては、
接客のデジタル化が大切です。
コロナで対面販売ができない場合でも、コミュニケーションをとる手段としてオンライン接客が可能です。
これまでは、画質の悪さやレスポンスの悪さで、ジュエリーをオンラインで購入することへの高いハードルがありました。
しかし、スマホの画質の向上や顧客のオンラインで購入する心理的ハードルが下がったため、オンライン接客での販売も伸びています。
とくに、中国ではライブコマースが盛んです。
YouTubeやインスタライブで、インフルエンサーが販売しています。
だれもがジャパネットタカタになれる時代です。
ライブコマースだと、お店に気軽に来られない全国のお客様が対象になるので、販売圏が一気に広がります。
そして、ECサイトの整備も必要です。
売れるECサイトは、
- 写真
- キャッチコピー
- 商品説明
をしっかり記載することです。
ジュエリーは特に写真が命です。
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購入までスムーズに流れる導線設計も大切です。
2021年は、メタバースが流行り、AR/VR空間で制作工程や接客の場面で活用することが期待できます。
VR展示会も開催されていくでしょう。
リピート
お客様にブランドのファンになっていただき、リピート購入してもらうことが企業経営の安定につながります。
新規顧客獲得コストはリピート維持コストより高いので、購入していただいたお客様をいかにファンにするかがポイントです。
ここでもテクノロジー活用が重要になります。
まず大事なのは、顧客情報の管理です。
- だれが
- いつ
- どこで
- 何を
購入されたのかを管理します。
顧客情報な企業の財産です。
顧客情報を分析し、最適なタイミングでお客様とコミュニケーションを取り続けることが大切なのです。
コミュニケーションツールとしては、
- メール
- LINE
- SNSのDM
がありますが、圧倒的にLINEの反応率は高いので、導入は必須です。
また、顧客の来店数や購入頻度をカテゴライズし、顧客層に応じたキャンペーンを打つことも必要です。
以上、制作工程や販売情報がデータ化されず、個人の経験と勘に頼ることが多く、データに基づくアクションができず、組織としてノウハウが蓄積できていません。
ビッグデータを十分に活用できているジュエリー企業はまだまだ少ないのが現状です。
テクノロジーを活用することで、生産性を上げる余地はまだまだあります。
オンラインサービス、ウェブ接客事例
カルティエ
2020年7月、モバイルサイト「カルティエ ブライダル」をローンチ。
カルティエのセミオーダーサービス「Set For by Cartier」を体験できる。
好みのモデルやカラット数、カラー、クラリティ、カットを選んで文字を刻印すれば、世界でひとつだけのリングを創ることができます。
ブシュロン
自宅からジュエリーをオーダーできる「ブシュロン リモートショッピング」です。
ブシュロンのジュエリーを全国のどこからでも購入できるサービスです。
ブシュロンのプロのスタッフが、要望に合わせてブティックの商品を選び、ビデオ電話で提案する対応も可能になっています。
ショーメ
2020年5月にスタートした「サロン ドゥ ショーメ」。
自宅にいながらLINEやZOOMなどを使って、サービスを受けられます。
サイズの相談やブライダルリングの選び方、ファッションに合わせたアドバイスまで、ショーメ銀座本店のアドバイザーが幅広い商品から案内してくれます。
ジュエリー業界のビジネスモデルの活用
ビジネスモデルは、プラットフォーム、サブスクリプション、D2C、EC、などを活用することができます。
ビジネスモデルを構築することで、小売りの枠組みを超えたビジネスに拡大することが出来ます。
プラットフォーム
ジュエリー業界のプラットフォームを構築できるとビジネスを展開できる可能性が広がるでしょう。
ECならジュエリー版や宝石版のアマゾンや楽天を作ってもいいでしょう。
市場は小さいですが、ジュエリーデザイナーとジュエリー職人のマッチングプラットフォームも可能性があります。
サブスクリプション
サブスクリプションは強力なビジネスモデルです。
簡単に言うと、月額課金モデルです。
ネットフリックスやアマゾンなどの映画の月額課金やファッション、お菓子、お花など次々とサービスが立ち上がっています。
サービス提供者からすれば、毎月の売上見通しが立てやすいので経営が安定します。
利用者は、お手軽な金額でいろいろなモノを試すことができるという利点があります。
ジュエリーレンタルや毎月宝石が送られてくるサービスがあります。
D2C
D2Cとは、Direct to Consumerの略でメーカーが直接消費者に販売するビジネスモデルです。
仲介業者を挟まないためコストが削減できる、SNSなどWebマーケティングを活用することでファンを獲得する、お客さんの声を活用できる、など様々なメリットがあります。
D2Cはスモールマスに刺さる商品やサービスに相性がいいので、ジュエリー業界にはピッタリです。
様々な分野でECは伸びていますが、ジュエリーとの相性はあまりよくありません。
やはりジュエリーは直接見て、触って購入するのが一番です。
カルティエやティファニーなどのラグジュアリーブランドもオンラインストアを展開していますが、ブランドの信頼感と店舗で実物を確認してから購入するという流れもあるので成り立っています。
時間はかかりますがEC経由でのジュエリー購入は必ず伸びる、また海外への販売も期待できるのでじっくり取り組むことが必要です。